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第12話  

「......」

 松山昌平は怒りで拳を握りしめた。

 かつて彼は、この女性が朴訥で面白みがなく、自分の意思を持たない操り人形のようだと思っていたが、今になって彼女にこんなにも鋭くて気の強い一面があるとは思わなかった。まるで爪を立てた野生の子猫のようで、人を狂わせるほどだった。

 この様子、どこが保護が必要な女性に見える?

 小林柔子はそれを見て、すぐに泣き虫になり、松山昌平の腕にしがみついた。「昌平さん、初さんに怒らないで。私と赤ちゃんが悪いの。初さんはそんなにあなたのことを愛しているのに、私たちのために犠牲にならざるを得なかったから。彼女が私と赤ちゃんに対して怒っているのは当然のことだ。だから、彼女がぶつけてくるのを許してあげてください......」

 「また間違えてる」

 篠田初は鼻で笑って言った。「あなたとあなたの子どもは私に感謝する必要はないわ。さっきもはっきり言ったけど、これはあなたたちのために犠牲になったわけじゃない。私はただ不道徳のクズを捨てただけ。それをたまたまあなたが拾ったのよ。だから私は、あなたたちの子どもの名前は松山拾がぴったりだと言ってるの」

 そして、彼女は松山昌平に視線を向け、にやりと笑いながら言った。「不道徳の人は、たいてい大きな不運に見舞われるものよ。松山さん......私の予感では、あなたは近日中に大きな不幸に見舞われるだろうね」

 「......」

 松山昌平のハンサムな顔が曇り、その怒りで頭が爆発しそうにだった。

 「子どもの頃から、母が言ってくれたわ。不運な人には近づかない方がいいって。不幸になっちゃうからって。だから、あなたたちはそのままずっと一緒にいればいいわ。それを尊重してるし、祝福するわ。じゃあね!」

 彼女の一連の言動は、まるで虎尾春氷のようで、自滅行為そのものだった!

 何しろ海都では、松山昌平という名前は絶対的な権威を象徴し、誰も彼に逆らうようなことはできなかった。

 だから、松山昌平に殴り殺される前に、篠田初は素早くその場を立ち去った。

何せよ彼女は言いたいことを言い、気が晴れた。あのクズ男とぶりっ子に対しては、あの

 二人がどれだけ頭が切れても、もうどうでもよかった!

 篠田初が去った後、小林柔子はこっそりと松山昌平を観察した。

 彼の性格なら、ここまで言われて黙っているはずがないだろう?

だが彼女は、冷たく引き締まった彼の唇がわずかに上がっているのを見逃さなかった。

 「昌平さん、もう怒らないで。初さんはきっと怒りがあまりにも激しくて、言葉を選べなかったの」

 「私と赤ちゃんが悪いの。もしあなたが怒るなら、私に怒ってください。どうか初さんのことは許してくやってださい......」

 「......」

 小林柔子は次から次へと偽善的な言葉を並べたが、松山昌平は一言も耳に入れず、ただうるさく感じるだけだった。

 だが、松山昌平は一言も耳に入れず、ただうるさく感じただけだった。

彼の視線は、篠田初が去った方向に向いて、彼女が完全に姿を消すまで追い続けた。

 ふん、彼の離婚予定の妻......ちょっと面白いな!

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 篠田初は病院を出た後、気分がとても悪かった。

 怒りの中に、わずかな哀しみも混ざっていた。

 彼女はあのクズ男とぶりっ子女に対して怒っていた。

 そして、腹の中の小さな命に対して哀しみを感じていた。

 お腹の中で小さな赤ちゃんがゆっくりと成長している、元々は輝かしい人生があるはずなのに、そのクズ男の父親のせいでなくなった。このことを考えると

 篠田初は怒りがこみ上げて、憎しみが沸き起こった!

 彼女は深呼吸をして気持ちを落ち着けさせ、自分の個人用コンピュータを取り出した。

 白魚のような長い指がキーボードの上で素早く入力し、モールス信号のように複雑なコードが次々と生成された。わずか10分で、侵入型のウイルスプログラムが完成した。

 篠田初は実行ボタンを押し、満足そうに微笑んだ。

 半時間後、松山グループのビジネスシステムが完全にダウンし、大量の顧客情報が流出した。

 松山昌平はまだ病院にいたが、その電話を受けて怒り狂った。

 「ウイルスの侵入だと?誰がやったの!」

 一方、篠田初はコーヒーを手に取り、窓の外の清らかな江上の波を見つめながら、ようや く気分が少し晴れた。

 彼女は言った通り、松山昌平は近日中に大きな不幸に見舞われた。これはただの冗談ではなかった。

 このウイルスプログラムは、松山グループを少なくとも半月は混乱させるだろう。

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